2012年10月20日土曜日

フィッツジェラルド短篇集

昔、フィッツジェラルドを頑張って読んでみた時は全然ピンと来なかった。しかし今読むとその凄さがわかる。こういうのって、なんででしょうね。まだこの短編集のうち、2本しか読んでないんだけど、どっちもスゴイ。 

「わたしには2つの面があるのよね。一つはあなたの好きな、眠たそうにしてる古いわたしだけど、同時に一種のエネルギーみたいなものがあって、これがわたしに思い切ったことをやらせるの。わたしのこういう面が役に立つような場所が世界のどこかにあるかもしれない。そしてわたしがもうきれいでなくなったときでも、こういう面はなくならないで、それまでと同じように役に立つのじゃないか--そんな気がするのよ」(氷の宮殿) 

「今の彼には、口がどうの目がどうの、手のしぐさがどうのといって、心を動かすことはなくなっていた。彼としては動かしたかったのだが、それでいて動かすことができなかった。そうした世界に彼はすでにおらず、そのままもはや戻ることができなかったからだ。門は閉ざされ、太陽は沈み、美しいものは無くなってしまった。あるのはただ、あくまでも時の流れに耐えうる灰色をした鋼鉄の美があるばかり」(冬の夢)

 3年にいっぺんくらいしか巡り合わない人生の真理みたいなきらめきを文章にできるんだから、作家ってほんとにすごいな。

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