2009年2月20日金曜日

村上春樹: 常に卵の側に

元気?って言われたら元気です、って言うけどほんとはそんなに元気じゃない。よっぽどくっきり病気だったら元気じゃないです、っていうけど答えられるくらいならまだ元気だと思う。返事がなかったら元気じゃないってことだろう。それかへんじがないただのしかばねのようだ。まあ、それでも日々にちいさな喜びというものはあるものです。

エルサレム賞での村上春樹(ひさえくんがそばやでみかけたらしい)スピーチが素晴らしかったので引用しておきます。

私が小説を書く理由はひとつだけです。個人的存在の尊厳をおもてに引き上げ、光をあてる事です。物語の目的とは、私たちの存在がシステムの網に絡みとられ貶められるのを防ぐために、警報を鳴らしながらシステムに向けられた光を保ち続ける事です。私は完全に信じています。つまり個人それぞれの存在である唯一無二なるものを明らかにし続ける事が小説家の仕事だとかたく信じています。それは物語を書く事、生と死の物語であったり愛の物語であったり悲しみや恐怖や大笑いをもたらす物語を書く事によってなされます。生と死の物語や愛の物語、人々が声を上げて泣き、恐怖に身震いし、体全体で笑うような物語を書く事によってなされます。だから日々私たち小説家は、徹頭徹尾真剣に、創作をでっちあげ続けるのです。

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