2009年1月22日木曜日

安定


こころの安らぎが欲しい時(鬼のようにつまらない映画を見た時とか)、ライナスの毛布みたいな、頼れるものがあるとありがたい。わたくしでいえば小さい頃に超好きでぼろぼろになるまで使っていた「バラのふとん」的なもの。バラのふとんはガーゼで出来たバラの模様のタオルケット。あまりにボロボロになって、機を伺って捨てられた時はこの世の終わりのように悲しんだ。

最近もそういうダメージを受けたことがあって、その時縋れるものとして頭に浮かんだのが村上春樹の短編集「神の子供たちはみな踊る」だった。神戸の震災をモチーフにした短編集で、どの作品もちょっと非現実的な出来事が絡みつつも、全体を貫く大きなものを感じる。妻に逃げられた男の奇妙な北海道への旅、片田舎の街でたき火に引かれる10代の少女、新興宗教と大きすぎる母の存在に人生を支配されかけた若い男、たった一人で東京を救うかえるくん、人生に疲れた女医、遠回りをして愛する女性を手に入れる小説家。何度読んでも擦り切れない、無駄のない文章。この混沌に満ちた世界で、たった一つしんとしているところ。実際じっくりじっくりこの本を読み進めるうちに、ダメージの底から浮かび上がることが出来てきた。

これからもうちひしがれることがたくさんあるだろうけど(「小林少女」を見た時とか)、この本がそばにあれば発狂しないで済むと思う。たぶん。みんなもそういうライナスの毛布的なものがあるんじゃないかい?

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