2008年1月13日日曜日

映画『レミーのおいしいレストラン』(2007,アメリカ)

「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」など、子供だましでない一流のアニメーション作品を作りつづけるピクサーの最新作。いつも素晴らしい成長物語を見せてくれますね。ニモの「おとうさん!僕、できるから!」で号泣したのも記憶に新しいのですが、この「レミー」は「もの作りとはどういうことか?」的テーマを備え、ますます表現の深みを増した傑作です。

主人公のレミーはグルメなネズミ。「誰でも料理ができる」をモットーとするパリのカリスマシェフ”グストー”に心酔し、人間に親しむニュータイプ。「ネズミはネズミ、人間は敵」という古い考えの父とは対立ばかりしている。アクシデントからネズミのコロニーを離れ、グストーの作ったレストランに紛れ込んだレミー。料理のできない新米シェフ、リングイニとタッグを組んで料理の腕を奮うことに…。

レミーが愛しているのは料理の技ではなくて、食材と食材の組み合わせが生みだす錬金術的作用。つまりはものづくり。でもネズミは料理の現場で一番忌み嫌われる存在だし、レミーは人間の言葉をしゃべれない。レミーがやりたい「フレッシュな食材を自分のセンスで自在に組み合わせる」なんてことはどう考えてもムリな状況なんですけど、「どうしてもこれが好き」っていう情熱と努力がシステムをありえなく変えてしまうんです。それは心の師グストーとパートナーのリングイニ、家族の協力、どれが欠けても不可能なもの。そしてそうやってレミーが頑張って作ったものが人を幸せにするという。

キーパーソンとして出てくる料理評論家は権威を重んじ、「誰でも料理ができるなんてウソ!」と辛口で切り捨てるステレオタイプの評論家。ものを作る人とそれを批判することで生計を立てる人、この関係も作品の裏テーマとしてありそう。ピーター・オトゥールのステキな声で語られる「誰もが偉大なアーティストになれるわけではないが、偉大なアーティストはどこからでも現れる」というメッセージには号泣必至!

映像はアホみたいに素晴らしく美しく、レミーが走っておなかがハカハカしてるところまで再現されてるほどの凝りよう。パリの景色とかもう最高。CM級の超絶3DCGが2時間近くずっと続いているかんじ。CGのディテール以外ではアニメだけどカメラワークが凄い。例えばレミーの逃げるアクションシーンでは、ハリウッドの実写映画ばりにレミーを追うカメラがレミーの動きが早すぎて半テンポずれてる(画面の中心じゃなくて左端にいたりする)みたいな。日本の2Dのアニメだとあんまりない演出ですよね。違ったらすみません。

「デス・プルーフ」に続き心を揺さぶられた素晴らしい映画でした。「Rotten Tomato」など、アメリカの辛口映画サイトでも評価が高く、ここでは100点100点90点みたいな感じだったので期待はしていたんですが、ここまで胸に響くとは。ピクサーはディズニーの完全子会社になって、ますます良い作品を作っておられますなあ。

☆85点

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